研究のねらい


 アジア太平洋の開発途上国、アフリカの後発開発途上国、および新興国(トルコ)において、貧困層との協働による課題の可視化、地域社会で進展している社会の仕組みや生業技術に関する内発的イノベーション(ツール)の発掘とその効果の検証、これらのイノベーションを創発してきた地域のイノベーターと科学者の協働メカニズムの検討、および弱者自身による内発的イノベーションを効果的にサポートできるフォーマル・インフォーマルな制度や仕組みの探索を行います。研究代表者らが東アフリカ、マラウィ共和国において小規模漁業者や水産物トレーダーとの協働のもとに開発してきた「生活圏における対話型熟議(Dialogic Deliberation in Living Sphere : DIDLIS)」の手法をTD研究の方法論の原型として、その実効性の検証と改善を通じてTD研究の理論と方法論を創ります。また、アジア・アフリカの多様な地域における研究と実践を通じて、重要なステークホルダーとの信頼関係を構築し、知識・技術の共創(co-production)を進めます。社会的弱者との協働によるTD研究の課題と障壁も明らかになってきており、貧困層に代表される社会的弱者をパートナーとした新しいTD研究の理論と具体的な方法論をさらに整備していきます。
 これによって新たなイノベーション(ツール)とイノベーターを発掘し、彼らとの密な協働を通じて貧困層の福利の向上と自然資源の持続可能性に資するTD研究を推進し、複雑かつ解決困難な課題の解決に資する学術の革新を促します。そのために、多様な分野の研究者と、これまでに協働を実現してきた貧困層に代表される社会的弱者、自然資源管理にかかわる行政・産業セクター・民間団体などのステークホルダー、社会的弱者との相互の信頼を構築しているレジデント型研究者・トランスレーターなどが参加する研究組織を拡充します。収集した貧困層から創発する多様な内発的イノベーション(ツール)を整理してその効果を可視化するための「持続可能な開発のための国際ツールボックス」を完成させ、これらのツールの開発者とユーザーが集まる「地域社会における内発的イノベーションのための世界フォーラム」を設立・運用して、多様なステークホルダーの相互作用と社会的学習を通じた新たなイノベーションの創発、貧困層が直面する課題の解決を促すTD研究の普遍性あるプロセスの理解と、地域レベルでの具体的な課題解決の仕組みの構築をめざします。彼らが創発している内発的イノベーションを基礎として、貧困層が強く依存する自然資源の持続可能な管理と、生業複合を通じた生業の安定化とレジリエンスの向上によって、社会的弱者の生活と福利の向上をサポートする仕組みを構築し、貧困解消という喫緊の国際的な課題の解決に貢献することを、最終的な目的とします。

課題

 経済のグローバル化がますます加速する中で、アジア・アフリカおよび南太平洋の後発開発途上国、開発途上国、新興国などの経済的格差の拡大と貧困層の生活の困難は、解決の兆しを見せていません。今後の経済成長が貧困層の福利の増大と 続きを読む ...

研究のねらい

 アジア太平洋の開発途上国、アフリカの後発開発途上国、および新興国(トルコ)において、貧困層との協働による課題の可視化、地域社会で進展している社会の仕組みや生業技術に関する内発的イノベーション(ツール)の発掘とその効果の 続きを読む ...

研究の進め方

●研究の全体像です ①貧困層の中のイノベーターを発掘し、課題と内発的イノベーション(ツール)を収集して、②その科学的・社会的妥当性の検証を通じてツールを順応的に改善します。③各地から収集される多様なツールを統合してツール 続きを読む ...